ようやく自分の時間がとれるようになると、やっぱり眠れなくなりました。昼間から、今夜はどんな格好で、どこを歩こう。車を使おうか、それとも、ジョギングの格好で歩こうかと悩んでいました。
 露出した直後からは、ものすごく後悔し自己嫌悪するのに、一日経つと、やっぱり見られたくなってしまうのです。それが何日も露出できないままだと、一日のたいはんを露出のことを考えて過ごすことになります。
 その夜は、車で出ることを止め、ジョギングスタイルのまま、以前に全裸になったことのある大きな公園に行きました。そこなら下半身ぐらいはいつでも脱ぐことができると思ったからです。トイレのある茂みは公園の入り口からは見えないのですが、こちらから入り口はよく見えます。誰れかが来ればすぐに分かるのです。
 私はトイレに入ったのですが、そのまま個室は開けずに出て来ました。そこでパンツを脱ぐつもりだったのですが、少し明る過ぎたのです。茂みの中に入り、そこで脱ごうとも思いましたが、そこでも勇気が出ませんでした。上半身はシャツだけでノーブラです。ここなら全裸になれるんだという思いは、いつしか、今日は全裸にならなければいけないに、変わっていました。
 トイレと茂みの間をなんどか行き来してしまいました。決心がつかなかったのです。
 その時「トイレですか」と、私に声をかける人がいました。驚きました。心臓が止まるといいますが、まさにそんな驚きです。公園の入り口は見張っていました。誰れも来ていません。もちろん、散歩のふりして公園の中も見てまわりました。誰れもいないことは確認したはずでした。
 私は無言のまま、彼から離れました。何かあったら声を上げればいい、そう思いました。
「いえ、トイレに入ったり出たりしていたみたいだから、あの、怖かったら僕、見張ってますよ」
 彼の声が少し私を落ち着かせました。声が若いのです。もしかしたら想像しているより、はるかに若いかもしれません。
「トイレ、汚いから」
 それでも声は震えていました。私は彼が露出痴漢であると感じはじめました。トイレが汚いなら自分が見張っているから、茂みですればいい、と彼が言うことを期待していました。できれば、オシッコが出て来るところを見せてほしい、絶対に触ったりしないから、と、頼まれることも期待していました。
 ところが彼の答えは意外なものでした。いえ、普通に考えれば当然のものでした。
「公園を出て右に行くと、小さいけどコンビニありますよ。トイレだけでも平気ですよ。僕もトイレだけで使ったことあるし」
 私はにっこりと笑って「ありがとう、行ってみる」と、言って、公園を後にしました。
 彼はいったいどこにいて、いつから私を見ていたのでしょうか。それに彼はあんな時間のあんな場所で何をしていたのでしょうか。それは分からないままなのですが、その日の夜、私は何度も何度もオナニーしてしまいました。
 もし、私が全裸になってしまったら、彼は声をかけて来たのか、それとも、どこかでこっそり覗いていたのか、もし、あのとき、私がオシッコが我慢できないと言ったら彼はどうしたのか、彼が露出痴漢で、オチンチンを出したら……。
 私の妄想は尽きることがありませんでした。