深夜でも開いているハンバーガ屋さん。このお店で、私は下半身裸になったことがあります。そして、アソコを見せたこともあるのです。その日もミニスカートでした。ミニといっても膝がしっかりと出るぐらいのミニです。それでも、深いそのお店の椅子に座ればスカートの奥は見えてしまいます。スカートの中はノーパンではありません。それでも緊張します。
 周囲をゆっくりと見ます。奥の席で学生ふうの男の子が携帯メールをしています。しばらく露出をしていなかったので、慣れていないせいでしょう、私の前は女の子でした。彼女は求人雑誌を見つめていました。足を広げれば、その女の子には私のスカートの奥が見えてしまうかもしれません。でも、それは恥ずかしいだけで少しも嬉しくありません。そうした席に座らないのが露出をするコツでした。
 別に女の子に見せるのが嫌なわけではありません。変態と思われるのは好きなのです。でも、変態と思われずに「だらしのない女」と思われるのは嫌なんです。
 奥の男の子の席はトイレのそばです。もし、トイレからうっかりスカートを下げ忘れて出て来たら、男の子にしか見えないところで私があわててスカートをおろしたら、もし、そのときノーパンだったら……。スカートをおろすのを忘れる人などいるはずがありません。でも、うっかりそんなことをしてしまったかもしれないと彼は思うかもしれません。
 そんな妄想をしていたら、心臓がドキドキとしてきました。緊張で息苦しくなるのです。嫌な感覚ではありません。
 突然、私は大学入試のことを思い出しました。大勢の人な中、私は孤独で、不安でした。そこには大勢人がいるのに、まるで私は暗闇の中にまぎれこんでしまったような気がして、テストどころか、そこに留まることさえ無理だと感じていました。そのとき、私の肩をたたく人がいたのです。同じ高校の女の子でした。
「そうだ、この子と待ち合わせしていたんだ」と、私は思い出しました。別に隣に座ってテストに挑めるわけではありません。でも、そこにたった一人でも知り合いがいると分かった私は孤独ではなくなりました。知り合いがいるということだけで、私はものすごく安心したのです。
 あの、入試会場で肩を叩かれた、その感覚に似た感覚が、露出を考えた瞬間の私に芽生えたのです。
 でも、露出はしませんでした。トイレにさえ行きませんでした。ただ、今度はノーパンで来てみよう、そう決めました。いつ来ることになるかは分からないのですが。