目の前のロッカーに洗面用具を置いて、小さなタオルで身体を拭こうとしたとき、庭に彼を発見しました。さり気なく番台を見るとおばさんの姿はありません。もうこの時間から入って来る人はいないからなのでしょう。
 身体を拭いてから、私は庭に人がいることなど気がつかないふりで、縁側に出ました。手には小さなタオルを一つ持っただけです。そのタオルで身体なんか隠したら逆に自分のエッチな部分を強調することになりそうな、そんなタオルです。
 もうすでに、ほとんど濡れてもいない身体を執拗に拭きながら「あっ」と、私は小さな声を上げました。そこに人がいたことにようやく気づいたというふりです。彼は私の声に振り向きました。隠されているのは胸だけです。少しふくれてきた下腹部、その下の決して多くないヘアー、そして、普通に立っていても見えてしまう私の恥ずかしいラビア、そのすべては晒されたままです。
「お久しぶりですねえ。しばらく見ないから引っ越されたのかと思いましたよ」
「田舎にもどらなければならない事情があって」
 太ももに汗が伝いました。外気に冷やされた汗の冷たさに、一瞬、私はアソコがぐっしょりと濡れてしまって垂れて来たのではと思いました。彼は池の様子を見るためか、しゃがんでいましたから、彼の頭は私の腰より低い位置にあるのです。手が震えそうになるのを必死でおさえながら私は意味もなく首のあたりを拭きました。さすがに下半身を拭く勇気はありませんでした。
「あの店、閉めたの知ってますか」
 あの店とは、私と彼と彼の恋人が出会う飲み屋さんのことです。私は自分の裸を見たことのある彼が、そこに恋人といる姿を見ることに、ものすごいエロティシズムを感じていました。
「ええ、ショック」
「いいお店でしたよね。私も好きだったので残念です」
 実は私はそのお店がなくなったことは知っていました。お店の前を通っていたからです。でも、そんなことはどうでもよかったのです。私はお店がなくなったショックで油断した様子を見せたかっただけなのですから。
私は彼に背を向け、そして、太ももを拭きました。少し汗ばんでいますが、もう濡れてはいません。膝が震えて来るのが分かりました。太ももから膝にタオルを移動させると、彼にはお尻を、いえ、アソコを突き出すような格好になります。
 そのとき、私の正面の遠い鏡の端に彼が小さくですが写っていることに気がつきました。彼は下から私のアソコを覗き込むような仕種をしていました。太ももの内側を拭きたいようなふりをしながら私は足を少し広げました。彼が私のアソコが見えやすい位置に移動したように見えました。鏡の端に少し写るだけですから、全ては私の勘違いかもしれませんが、それでも私を興奮させるには十分でした。
「今日は、涼しいですよね」
 前屈の姿勢を直し、振り向いてそう言いました。彼は池のほうを見ていました。
「ええ、寒くてもお客さんは来ませんが、夏が涼しくてもウチは厳しいですね。過ごしやすいのはいいんですけど」
 私はクスクスと笑いながら、脱衣場にもどりました。別におかしくなんかありませんでした。ただ、そうしなければ、他には、私はオナニーして果てないかぎり、その場から動く方法を失ってしまいそうな気がしたのです。
 家にもどると、オナニーしました。少しで止めました。でも、オナニーし、露出を妄想したことは私にとっての大きな変化でした。